石川県へ旅行に行った際、偶然に立ち寄った吉田酒造店。近くには透明度の高い手取川が流れ、緑がたくさんあるその土地で作られた日本酒は、原料米に石川門、酵母は金沢酵母。そして能登杜氏が得意とする山廃造りと、地元の素材と技から作られた伝統の新しいスタイル。完璧なテロワールを表現するために酵母以外は無添加のナチュラルな味わいに仕上っているコメントからも地域に根付いた酒造りを大切にされている姿勢がとても印象に残りました。
手取川 u yoshidagura 2020 山廃純米無濾過生原酒
香りはとてもフルーティで、口に含むとフレッシュな微発泡のプチプチ感とバナナのような甘さが口の中に広がります。山廃造りらしく、厚みとコクがある味わいですが、最後に優しい酸味でキュッと締めくくってくれるので、甘ったるさが残らずに後味は意外とスッキリとした印象です。
若干味に慣れてきて、少し温度を上がってくると、バナナだと感じていた甘さは酸味が増して、濃いめのグレープフルーツへと印象が変わります。なので、総合的には複雑な味として評価されるお酒なのかもしれません。
純米酒で真価が発揮される金沢酵母
使用されている酵母は金沢酵母。平成7年から協会14号酵母として全国に配布されるようになった金沢酵母ですが、協会酵母9号と比較して吟醸香が高めで酸が少ないのが特徴です。そしてその特性から純米酒および純米吟醸酒においてその真価が発揮される酵母と考えられています。確かに穏やかな香りと優しい酸味がこの金沢酵母の特徴なのかなと感じます。
能登杜氏が得意とする山廃造り
製法は能登杜氏が得意とする山廃造り。
能登杜氏ってどなた?と思って検索すると、日本酒を作る杜氏集団の一つと。そうでした杜氏にも流派があって全国の酒造りが盛んな県には各集団があったのを思い出しました。
能登半島は農業を営むのには不適で、他に特産物もなかったため、農閑期には近畿地方へ酒造りのために出稼ぎで行っていたのが始まりなようです。鉄道ができた頃には、職業斡旋所があった大津から富山、石川などにも斡旋されました。能登流と称され、味の濃い酒質の精成酒が特徴と一般的にいわれ、現在能登流に属する主な杜氏は、農口尚彦さんや満寿泉の三盃幸一さんなどがいらっしゃいます。
石川県のおつまみといえばホタルイカと白えび
石川県のある北陸地方のつまみといえば、ホタルイカや白えびが代表的。その中でもホタルイカの魚醤干しと白えびの姿干しは日本酒のおつまみにはぴったり。ホタルイカから滲み出る魚醤を味わいながら一杯、白えびの香ばしい香りを楽しみながら一杯と、味わいが濃いめの手取川との相性も合いお酒もどんどん進んでいきます。